工学部ヒラノ教授
タイトルはうちの大学の教授のことではない。
著者の今野氏は東工大の名誉教授であり工学部の実録秘話が本作では描かれている。
まず印象に残ったことはとにかく著者のセンスが古く、オヤジギャグがサムイ。高齢者のことを「シーラカンス」をもじってビーラカンス、エーラカンスとなんの前置きもなく表現が出てきたときは何を言ってるのか理解するのにしばらく時間がかかった。科研費の申請を通りやすくするコツも字が上手い人に書かせるといいなど、時代を感じる話が多々存在した。(現代はもちろん申請書を手書きなどしない)
ためになったのは教授は学生のことを多かれ少なかれ論文を量産するためのソルジャーとして見ているという話。優秀な学生を博士課程までこき使った挙げ句なんの就職先の斡旋もせずにポイ捨てする教授も世の中には存在するようだ。こういう話を聞くとやはり研究室選びは死活問題なのだなと再認識させられる。
あとはアカポスを得るには運が絡むということ。たまたまポストが空いてたとか、文科省の方針が変わったとかで有能な人物がポストにありつけず、無能な人物がポストを得るということがままありえる。そういう話を聞くたび私は世の不条理を感じずにはいられない。この状況が変わる日は果たして訪れるのだろうか。